和歌山へ向かうのは、私にとっては、距離としてそう遠くはないのに、いつもどこか小旅行のような気分になります。柑橘類専門のカフェ「みかんの木」の爽やかな香りや、和歌山中華そばの懐かしい味わいが、旅を思わせてくれました。


一度行ってみたいと思っていた和歌山城ホール。新しいホールの静かな佇まいを前にすると、胸の奥がふっと高鳴ります。目的の公演は、財津和夫さんの「トークと歌のプレゼント」。きっとあの「サボテンの花」を聴かせてくれるはずだという期待が、会場へ向かう足取りを軽くしてくれました。


「サボテンの花」は大好きな曲で以前オカリナで何度も練習し、思い入れのある曲です。歌詞に出てくる「雪」という言葉もどこかロマンチックで、冬の透明な空気を思わせるのが好きでした。そんな曲を、ついに財津和夫さん本人の弾き語りで聴けました。キーボードを弾きながら語りかけるように歌うその姿は、長い時間をかけて曲と寄り添ってきた人だけが持つ深いものを感じさせてくれました。
自分がオカリナで吹いてきたメロディが、まったく新しい表情を見せてくれたようで、胸の奥がじんわりと熱くなりました。

客席には、財津和夫さんと同じ時代を歩んできた方々が多く、ステージと客席がひとつの空気を共有しているような、とても温かい雰囲気に包まれていました。プロジェクターには、財津さんの幼いころの思い出の写真や、アマチュア時代、デビュー当時の写真を映しだされ、エピソードが語られます。私自身は少し時代が前後するのですが、客席の皆さんがそれぞれの“あの頃”を思い出しながら聴いているのが伝わってきました。同じ時代を生きてきた人たちが、同じ音楽を前にして、そっと記憶を重ね合わせる――
そんな優しい一体感が、会場全体を満たしていました。 途中には質問コーナーもあり、財津さんとファンの距離がぐっと近づく、とても和やかな時間でした。
そして最後に歌われた「心の旅」。ステージで歌う財津さんの歌声に合わせて、客席のあちこちから自然と声が重なり、気がつけばホール全体がひとつの大きな合唱になっていました。あの瞬間の一体感は、言葉では言い尽くせないほどの感動で、今でも胸の奥に静かに残っています。
歌い出す 財津さんへと 寄り添えば
「心の旅」は 声ひとつなる
帰りに「ぶらくり丁」を歩いてみました。和歌山ブルースの記念碑があり、近づくだけで歌声が流れてきました。
